熊本県行政書士会会員:特定行政書士 園田 孝昭
 インボイス登録番号 : T 7810988631799 

 

行政書士 そのだ 事務所



Tel:096-201-3756 

 

 相続開始前における手続

 被相続人となる皆様が相続開始前において、将来の相続者が困惑することなく、相続手続きを行えるような2つの手続(予防法務)を紹介します。
1.遺言について
 先ず「遺言」の手続があります。
被相続人となる皆様が将来の相続人への財産継承を予め「遺言」の形式で作成し、相続開始時これが開示されることで整然とスムーズに財産継承が実施される手続きです。
被相続人である遺言者が自身の意思を確実に表示することで、相続や遺贈等をめぐる親族間等の争いを防止し、合わせて大切な遺族への最後のメッセージを送ることとなります。
2.成年後見制度について
 次に「成年後見制度」の手続があります。
被相続人となる皆様が精神障害等により判断能力が不十分となった場合に、本人の身上保護と財産保護を目的とした手続で、ひいては配偶者や家族、親族等への心理的、経済的負担を和らげる手続です。
制度には既に本人の判断能力が不十分な状況である場合、家庭裁判所へ本人や配偶者等が申立てて審判が下されることで、本人の判断能力に応じ選任された3類型の後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、与えられた権限の範囲内において本人の身上保護と財産保護等を行う「法定後見制度」と、 予め本人が判断能力の低下に備える目的で、将来後見人(「任意後見受任者」)となる人物との間で公正証書による任意後見契約を締結し、後の判断能力低下時この受任者や本人、配偶者等が家庭裁判所に「任意後見監督人」選任の申し立てを行い確定後、契約の範囲内で本人の身上保護と財産保護等を行う「任意後見制度」があります。
 この成年後見制度には行政書士もその浸透と活用に関与しており、日本行政書士連合会が主導する「公益社団法人 コスモス成年後見サポートセンター」に所属することで、制度利用者の意思を反映した身上保護と財産保護を確立させ安心を提供しております。
 

  遺言書作成の意義

遺言書作成の目的を記します。
1.被相続人の意思を尊重するため。
2.相続手続きの円滑化のため。
3.相続にまつわるトラブルを予防するため。
◎残される家族や関係先への十分な配慮が望まれます。
 

  自筆証書遺言について

 一般に知られる遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、先ずは「自筆証書遺言」について記します。
「自筆証書遺言」は、遺言者本人が全文と作成日付及び遺言者氏名を自書し押印することが要求されますが、財産目録については自書でなく、パソコンを利用したり、土地や建物の不動産登記事項証明書や通帳のコピー等資料を添付し、各ページに遺言者が署名押印することが認められています。
書き間違い訂正や、書き足し追記の場合は、その場所が分かるように示した上で、訂正又は追記した旨を付記して署名し、訂正又は追記した箇所に押印して対処します。
 ここで遺留分を侵害される相続人が存在し、トラブルに発展する恐れ等が予見できる場合などには、遺言の付言事項に遺言者の考えを明示し、その理由や事情を記載するなどの対処も必要となります。
 更に予備的遺言を作成してトラブルを予防するケースもありますが、これは推定相続人が遺言者より先に死亡する事態に予め備えるもので、推定相続人の次に遺産を渡す人物を指定することで、遺言者の意思を尊重し反映させるものです。
また相続開始後には、その遺言書の正当性を判断するために家庭裁判所による遺言書の「検認手続き」が生じます。
 尚自筆証書遺言では、遺言者本人が自宅などに保管することで生じる紛失や将来の相続人による改ざん、破棄などの問題点がありますが、令和2年7月10日より開始された法務局の「自筆証書遺言遺言書保管制度」がこの解決策となり得ます。
 参照HP: 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)より
 

  公正証書遺言について

 次いで不備が生じにくく、紛失破棄の恐れの無い「公正証書遺言」を記します。
1.「公正証書遺言」は、遺言者本人が公証人に相続の意思と内容を告げ、これを受け公証人が遺言者の真意を確認後、文章にて取りまとめた遺言書(案)を作成し、遺言者の意向での修正等を経た後、手続当日に遺言者と証人2名が口頭で若しくは閲覧によって内容確認を行い、公正証書遺言として完成させるもので、遺言者の遺言作成に当たり公証人が相談に応じたり、時に助言をすることで、形式的な不備や内容の不正確性が入る余地を無くすことができる有利性を持つなど下記のメリットを有しています。
@経験及び知識豊かな公証人が形式的にも法律的にも満足する遺言書作成に携わり、自筆証書遺言に比べ安全確実な物となる
A遺言者の自書は要件に当らず、遺言者が病弱であったり、入院等で手書きが不可能な場合でも公証人が遺言書作成に当たれたり、署名や押印が困難な場合にも対応することができ、公証役場へ出向けない正当な理由があるなど時に応じ遺言者の所在地まで出張しての手続も可能とされている
B遺言書原本は必ず公証役場に保管されるので、紛失や破棄、改ざん等の恐れもなく、相続開始時の家庭裁判所による検認も不要となる
C保管の安全性を担保するシステムが構築され、原本等が災害で滅失しても、復元ができる電磁的記録(遺言証書PDF)としても保管されている
D作成された遺言公正証書は遺言情報管理システムに登録されており、相続開始後関係相続人等が全国の公証役場に、被相続人の遺言の有無を確認することができる
2.作成に当たり先ず被相続人自身が、保有する財産をきちんと把握することです。
3.次に誰を相続人とし、どの財産を、どれだけ相続させるのか決めることです。
4.公正証書遺言に必要な書類を準備します。尚証人2名も準備が必要です。
5.最寄りの公証人役場へ出向き、事前打ち合わせを行います。
6.所定の日時に公正証書遺言を作成し、正本と謄本の交付を受け、手数料を支払い、終了します。
7.公証人手数料は役場に出向いた場合、財産額1憶円以下で3万円から8万円ほどです。
 上記詳細は下記HPを参照下さい。
 参照HP: 日本公証人連合会 公証事務「遺言」
(https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02)より
 

  遺言書作成後の対応

 遺言書作成後にも十分な配慮が必要となります。
1.家族や必要と判断する関係先に、遺言書作成の事実と保管先を伝えておくことです。
2.法定相続人が遺留分を侵害された場合、そのトラブルを想定しておくことです。
3.財産の詳細な目録を作成しておくことです。
◎相続が開始された時、予見されるトラブルを予め防止して下さい。
 又この頃の民法改正等により、遺言に当り留意する事項が増しておりますので、この点も今後十分に注意が必要です。
@相続と遺贈等の選択、A遺言執行者選定、B配偶者居住権、C遺留分と遺留分侵害額請求権及びD生前贈与と死因贈与についてなどが有ります。
尚節税や登記に関した具体的内容については、税理士や司法書士など専門家による判断を仰ぐことが必須です。
 

  成年後見制度について

 「成年後見制度」には法定後見制度と任意後見制度があり、両制度はいずれも家庭裁判所に後見開始の申立をし、審判が確定することで制度を利用することになりますが、任意後見制度においては、被相続人に判断能力がある時点で、受任する者との間で「任意後見契約」を締結しておく必要があります。
この後見人の選定に関して当然未成年者や破産者等は該当しませんが、法定後見では最終的に家庭裁判所が判断をし法定後見人を、任意後見では契約で定めた者(任意後見受任者)が任意後見人となります。
 尚現在政府において「第二期成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定され、令和4年度から令和8年度までに計画に基づく施策を実施中で、後見制度の運用の改善等(本人ファーストに基づく後見人選任や交代の実現など)が検討されたり、優先する取組に任意後見制度の利用促進等が謳われています。
団塊の世代の人口比率に基づく2025年問題も踏まえ、今後の成年後見制度の利用促進が図られていくことが期待されます。
※現状の後見制度詳細は下記を参照下さい。
 参照HP: 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/pdf/pamphlet.pdf)より
※第二期計画詳細は下記を参照下さい。
 参照HP: 厚生労働省「第二期成年後見制度利用促進基本計画の策定について」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000917337.pdf)より
◎成年後見制度の利用には、上記2種の法定又は任意について専門家の助言を受け、内容を十分に把握するとともに、親族等の理解を得ることが肝要です。
 

  公益社団法人コスモス成年後見サポートセンターについて

 ここに行政書士による(公社)コスモス成年後見サポートセンターがあります。
所定の研修を終えた行政書士が、後見人、後見監督人などとして、保護、支援します。
1.組織の立ち位置
 成年後見制度の平成12年4月発足を受け、全国の各行政書士は制度利用促進等に積極的に係わっておりますが、全国的な均一で精緻かつ安心される運用の展開を図る必要性の機運が高まるなかで、日本行政書士連合会が主導する形を取り、平成22年8月公益社団法人コスモス成年後見サポートセンターが設立されました。
 設立に当り、「高齢者、障害者等が自らの意思に基づき、安心でその人らしい自立した生活が送れるよう財産管理及び身上保護を通じて支援し、もって権利の擁護及び福祉の増進に寄与し、個人の尊厳が保持されること」を目的としています。
 よって当法人は現在行政書士としての倫理に基づき、後見制度の規範に則りながら任意後見、補佐及び補助の活用、身上保護重視、意思決定支援の必要性などの課題解決に積極的に取組み、実務・倫理面での研鑽を重ね、不祥事根絶に努めています。
2.行政書士の後見業務を確かなものとするサポートセンターの後見活動
 第一に後見人を養成する活動として、行政書士の知見に加え、成年後見人等として必要な知識を研修を通じ学ばせると伴に、一定期間ごとに法改正や地域の実情や特性に合わせた研修を実施し、後見人の養成に当たっています。
 第二にサポートセンターによるバックアップとして、 成年後見人等をフォローするために後見人等を対象とした相談窓口の設置や、業務報告についてのフィードバック体制の確保、及び基本計画等に関する各地の取組や先行事例などの情報共有化を促進しています。
 第三に後見人等の不正防止に取り組むためのサポートセンターの業務管理体制として、制度上は成年後見人等には1年に1度の家庭裁判所への活動等の報告義務がありますが、当センターでも各管理項目への報告義務を課しています。
 この報告義務によって、事務経過記録の確認による訪問回数やその内容等及び身上保護の面を確認点検をする事、財産管理面では少額でも利益相反の無いことを厳しく点検確認する事、更に任意後見契約で受任者に選任された際には財産管理を開始後3ヵ月毎に委任事務処理状況の報告実施を契約書内に記載する事などの措置により、不正を防止する体制を確立させています。
 上記詳細は下記パンフレットを参照下さい。
 参照:「コスモス成年後見サポートセンターのご案内」
(https://cosmos-sc.or.jp/images/side/goannai.pdf)より
◎個人の尊厳保持に努め、将来に向けた高齢化社会の維持のお手伝いをいたします。
 

 相続開始における遺産分割協議手続

 相続の開始後、通常遺言が存在すれば遺言者の意思を尊重する指定相続分で、存在しなければ法定相続分により遺産が分割されますが、共同相続人全員の合意があれば、 遺産の分割方法や配分を協議し、結果全員合意に基づく遺産分割協議書が作成され、各々が遺産を相続することとなります。
以下に遺産分割協議の流れを記載しますので、ご確認下さい。
 

 遺産分割協議の手続

 
<@相続人の確定>
遺産分割は共同相続人全員の同意が無いと成立しないので、戸籍謄本の収集等により該当する相続人を確定させる
 

 
<A相続財産の調査と確定>
遺産には現金始め預貯金、貴金属、不動産等の価値ある積極財産とローン返済等の負債である消極財産とが当然に存在するので、相続に当りこれらの実情を確実に調査し遺産内容を確定させる
 

 
<B共同相続人による財産分割の協議>
遺産内容が判明すれば共同相続人の間でその情報を共有する事が必要となり、各自は内容を十分に把握した上で、自身の希望に沿う遺産の分割方法と配分を思案する
この後共同相続人による協議が当然に発生するが、各自が議論しあい、許容し納得できる条件を熟慮しながら、全員の合意に基づいた遺産分割協議書の作成へと移行する
尚協議の進展によっては、弁護士による調整等の必要性も生じる
 

 
<C遺産分割協議書の作成>
各自が相続する遺産項目と配分・方法等について、明確な文言を用いて協議書(書式の規定はない)を作成する
公証人による遺産分割協議公正証書の選択もあるが、作成費用は各相続人の財産価額に基づく手数料額の合計額となる
 

 
<D共同相続人全員による協議書への署名捺印>
遺産分割協議書は共同相続人全員の同意書であり、協議終了後各自が登記等の相続手続きを行うので、共同相続人全員が署名捺印を行い、協議書作成が終了する
印章には実印が望ましく、これは相続手続時関連機関等が協議書に共同相続人の実印の使用を求めるケースが多数あり、併せて期限内(3ヵ月)の印鑑証明書提出の必要も生じるためである
 

 
<E共同相続人各自が相続財産の名義変更等実施し相続の終了>
遺産分割協議書を基に不動産は登記手続、自動車は登録手続、株式は名義変更手続等を行うことになる

           
Copyright © 2020 行政書士そのだ事務所 All rights reserved.